心はやさしく 言葉は美しく

暮らしの中からやさしさと美しさをみつけてゆきます

八月と蝉と...

八月はいよいよ盛夏となり

逃げ場のないような暑い日が続きますが

陽射しの中に

地を這う熱っぽい風に

街路樹の枝ごと揺れる激しい葉擦れに

何かを感じます

 

遠い 遠い過去が

忘れないで下さい

忘れないで……

 

蝉達の鳴き声に混じって

聞こえてくるような

 

 

 八月

 

蝉が鳴いている

桜並木の黒い葉影の道

道のむこうは 博物館 動物園

 

陽ざしを砕いて噴水が愉快に跳ねる

子ども連れに追いこされ

私達はゆらゆら歩く

 

道端の母子像の前で

夫が立ちどまり 何か言った

聞き取れなかったけれど わかった

 

かたわらに新しい千羽鶴

みずみずしく匂う百合の花束

ずっと昔の八月に捧げられた供物

 

蝉が鳴いている

楽しく夏を過ごす私たちに

伝えたいことがあるように

 

 

* 添付写真は版画家岩崎浩三(日本版画院)先生から

  詩「八月」にとくださったものです。

 

 

 

  上野公園内の母子像「時忘れじの塔」は

  落語家の故林家三平さんの奥様と有志の皆さんとで

  建立されたそうです。八月は花束が溢れています。